はじめに
外科スタッフは4名で、全スタッフが和歌山県立医科大学第二外科教室に所属しています。治療には外科専門医・指導医(日本外科学会)、消化器外科専門医・指導医(日本消化器外科学会)、日本内視鏡外科学会技術認定医が中心となり、消化器・一般外科手術、腹部救急手術を担当しています。
手術内容は胃癌、大腸癌をはじめ、食道癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌の全領域の消化器癌手術と食道裂孔ヘルニア、胆石、鼠径ヘルニア、痔疾患、皮下腫瘍などの良性疾患、虫垂炎、腸閉塞(ヘルニア)、消化管穿孔、穿孔性腹膜炎などの緊急手術を行っています。
消化器癌診療については、各々の癌治療ガイドラインに則り標準治療を実施しており、手術は可能な限り低侵襲手術(腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術、ロボット支援下手術)を行っています。胃癌、大腸癌などの消化管癌では全例低侵襲手術を推進し、食道癌では胸腔鏡下食道切除・腹腔鏡下胃管作成を施行しています。これにより、見た目の整容性だけでなく詳細な外科解剖を得ることができ、開腹手術に勝るとも劣らない繊細な手術が可能となっています。さらに県内4台目となる手術支援ロボット"da Vinci Xi"を導入しています。
橋本市民病院では、”手術支援ロボット da Vinci (ダヴィンチ)の最新鋭機 Xi を用いた手術”が保険診療で受けられます!
da Vinci Xi の構成
手術支援ロボットは、3つの主要部分から構成されています。執刀医が3D映像を見ながら精密に操作する“サージョンコンソール”、患者さんの体に直接触れて手術を行うロボットアームを備えた“ペイシェントカート”、そして高性能コンピューターが映像や情報を処理し両者をつなぐ“ビジョンカート”です。これらが連携することで、人の手では難しい繊細で安定した動作が可能となり、より安全で体への負担が少ない低侵襲手術を実現します。

da Vinci Xi の特徴
手術支援ロボットには、次のような優れた特徴があります。
①鮮明な3D(3次元)画像を映し出す高性能カメラを搭載しており、体内の組織や血管を立体的かつ拡大して表示できます。これにより、肉眼では見えにくい細かな構造も明瞭に確認でき、より精密な操作が可能になります。
②人の手のような自由な動きを再現します。ロボットアームの先端には7つの関節があり、最大270°の可動域を持つため、人間の手や指の動きを超える柔軟性を実現しています。これにより、狭い術野や複雑な角度からのアプローチも容易になります。
③手振れ防止機能を備えており、執刀医のわずかな手の震えも自動的に補正します。これによって、周囲の組織を傷つけるリスクを低減し、より安全な操作が可能になります。
これらの機能によって、従来の方法では難しかった繊細かつ正確な手術操作が可能となります。ただし、手術支援ロボットが自動的に手術を行うことはありません。すべての動きは、執刀医がサージョンコンソールから直接操作しています。手術はダ・ヴィンチ手術の認定ライセンスを取得した執刀医を中心に、ロボット操作に精通した看護師や臨床工学技士がチームを組み、安全管理と円滑な手術進行を行っています。このように、技術と経験を兼ね備えた専門チームが、患者さんの安心と安全を守りながら手術を行っています。

外科でのロボット支援下手術について
当院では現在、結腸がん(上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸)を対象にロボット支援下手術を行っています。2025年8月からは、胃がんに対するロボット支援下手術も開始し、今後は直腸がんへの適応拡大も予定しています。
ロボット支援下手術は、多くの利点を持つ一方で、すべての患者さんに適応できるわけではありません。手術歴や既往歴、体格や臓器の状態などを総合的に判断し、安全かつ効果的に行えると判断された場合にのみ適応となります。そのため、場合によっては他の術式をご提案することもあります。
ロボット手術資格者
- 術者資格者:中村公紀、小澤 悟
- 助手資格者:竹本典生、石川順也
(実際の手術風景)


消化器癌以外の手術について
胆石や鼠径ヘルニア、食道裂孔ヘルニア、急性虫垂炎や消化管穿孔の腹部救急疾患に対しても腹腔鏡下手術を施行し、早期退院・社会復帰に寄与しています。
痔疾患では、内痔核(いぼ痔)への通常の切除術だけでなく硬化療法も行い、痔瘻・裂孔手術及び直腸脱手術(経肛門的、腹腔鏡下)も実施しています。
薬物治療、緩和ケア、せん妄対策について
消化器癌の薬物療法やがん終末期患者に対する緩和ケアについては、薬剤師やがん化学療法認定看護師、緩和ケアチーム(緩和ケア認定看護師)や医療ソーシャルワーカー、訪問看護ステーションと連携をとって対応しています。また、最近、がん治療で注目されている免疫チェックポイント阻害薬を投与する機会が増え、その特殊な副作用を地域で管理するために、当院と和歌山県立医科大学附属病院紀北分院、医療法人南労会紀和病院を中心に、医師会並び薬剤師会との病診薬連携体制:“伊都橋本医療圏免疫療法サポートチーム (アイアイサポートチーム) ”を構築しました。地域の医療機関が垣根を超えて一枚岩となり迅速な連携で患者さんを支え、免疫チェックポイント阻害薬の副作用の早期発見と重症化の予防に取り組んでいます。また、医師・看護師をはじめとする多職種の医療スタッフが協力し、“せん妄対策チーム”を立ち上げました。術後せん妄を予防することで、患者さんの生活の質(QOL)の向上、術後の身体抑制ゼロ、そして医療スタッフ(特に看護師)の負担軽減を目指しています。院内全体で連携し、安心・安全な入院生活を支えるための取り組みを続けています。
